技術解説
Tsuchiya Works
リチウムポリマー充電池は一般的に充電が難しい、充電システムのコストが高い、バッテリユニットの価格が高い、扱いによっては危険等、デメリットばかり強調されています。ただし、そのポテンシャルは他の充電池には無い魅力があります。
瞬間的なパワー(放電能力)は鉛の数倍、重量、容積は1/5程度です。
Tsuchiya
Worksでは前記の欠点を充電方式の吟味とバッテリユニットの選別により解決しました。
充電の難しさと充電器価格については、バランス充電方式(FB-Charger)を採用しました。
FB-Charger は、4セルまで、リチウムポリマー専用、充電電流1000〜1500mAhです。 コンパクトなアルミ筐体と安定した動作、セルチェッカー機能もありと優れものです。
操作も楽で価格も低く抑えられました。
バッテリユニットに関してはコストパーフォーマンスに優れたものを10種類ほど厳選しています。
性能重視のため価格はそれなりになりますが、製品ベースでは低価格を実現しました。
バッテリの性能について
さて、FB-Powerを例にして優れているところを解説致します。
採用しているリポバッテリはハイレートディスチャージャタイプです。
FB-Powerは14.8V 5800mAh 25C です。
最後の25Cの意味は放電能力になります。
5.8×25つまり145アンペアの電流を取り出すことが可能です。
もちろん、電動リールはそこまでの電流を要求することはありません。
また電源ケーブルもそこまで対応していません。
ただ言えることは少なくともバッテリが非力でトラブルが起こることは無いということです。
現実的にはピーク30〜50アンペア程度を想定していますが、容量を抜きにすれば大型電動リールでも使えるスペックです。
出力端子について(ワニ口対応モデル、24ボルト用モデルを除く)
出力端子にコネクター&プラグ方式を採用しました。
電動リール側の端子も径とピン数が違いますが、ほぼ同形状のものです。
このコネクタは差し込んでからネジで締めますので、ショート、外れが防止できて安全確実です。
特にリポバッテリはエネルギー密度が高いのでショートすると大変危険です。
他メーカーと誤接続回避もあり出力端子は3ピン、バランス充電端子は5ピンとなっています。
保護回路について
過充電、過放電、短絡(ショート)に関しての保護回路の説明です。
※過充電保護回路について
リチウム充電地は1セルあたり3.3V〜4.2Vの範囲で使用しますが、上限の4.3Vを超えて充電すると内部の化学変化により大変危険な状態になります。
専用充電器(FB-Charger)は常に電圧を監視して充電しますので、4.2Vを超えて充電することはありません。
※過放電保護回路について
このバッテリには過放電保護回路は搭載していません。
使用時は余裕をみて1セルあたり3.7Vを使用下限電圧として推奨します。
下図はFB-Power
の充電データですが、逆読みすると放電特性のデータでもあります。
赤線が1セルあたり3.7Vラインになります。
赤線より低くなると急激に電圧降下している様子がお解かりになると思います。
この推奨下限電圧を各バッテリの電圧に置き換えると
4セルタイプのFB-Powerで14.8V、3セルタイプのFB-Pocket
で11.1Vになります。
これはカタログデータ上の定格電圧です。
残量30%の状態ですが、この電圧を下限として使用を停止するとバッテリをより良い状態に保つことができます。
使用時には常時電圧を表示するような仕様になっていますので確認は容易と思います。
※短絡(ショート)保護回路について
プラス電極とマイナス電極が間違ってショートしますと非常に大きな電流が流れます。
当バッテリでは、30アンペア以上の電流が一定時間流れると、短絡と判断して内部のヒューズが切れて危険を回避します。
ヒューズが切れた場合、電圧表示に異常が無くても修理が必要になります。
※保管に適正な電圧について
リチウム充電池は保存に適した電圧値があります。1セルあたり3.8Vです。
各バッテリの電圧に置き換えると
4セルタイプのFB-Power、FB-10系 で15.2V、3セルタイプのFB-Pocket
で11.4V
この電圧値が一番安定していますが、1セルあたり3.7〜4.1V程度であれば全く問題ありません。
リチウム充電池は無負荷の状態(これらのバッテリでは電圧を表示していない状態)であれば、自然放電はほとんどありません。1セルあたり3.8V近辺であればそのまま長期保存が可能です。
またリチウム充電池にはメモリー効果(継ぎ足し充電すると電池の実容量が減る現象)がありませんので、充電を途中で止めても差し支えありません。使用後に1セルあたり3.8V以下であれば、少しだけ充電して1セルあたり3.8V近辺にして保管が望ましいです。
充電方式について
充電方式は大きく分けて急速充電方式とバランス充電方式があります。
一般的な電動リール用バッテリ
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一般的な電動リール用バッテリは前者の急速充電方式になります。図にように点線内のバッテリ内部に各セルの電圧を監視するICを設けています。
充電時には1セルの電圧が4.2Vになると充電を停止する仕組みです。電源はフル充電の最大電圧に合わせて16.8VのACアダプタになります。
充電電流は約1Ahですので5Aのバッテリでは充電時間は5時間になります。
メリット
充電時:充電操作が楽
使用時:過放電制御可能
デメリット
充電時:1セルでも4.2Vに達すると充電を停止するため完全なセルバランスが取り難い(監視ICによっては充電完了セルをパスして充電を続けるタイプもあるようです)
発熱が想定される充電機能がバッテリ内部にあるためバッテリが熱に煽られる
使用時:出力制御をしてるため応答性が悪くなる
保管時:バッテリ内部の半導体により僅かながら放電する(過放電制御が働くまで放電するとバッテリのコンディションを落とす)
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Tsuchiya Works
バッテリ
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さて、Tsuchiya Works の充電方式はバランス充電方式です。充電機能はバッテリ外部になります。充電器内部には小さな充電器が4個内臓されていて、4セル独立で充電します。
充電電流は約1Ahですので5Aのバッテリでは充電時間は5時間になります。(急速充電と同じ)
充電器の価格は高くなりますが、バッテリの価格は安くなります。
Tsuchiya Works のバランス充電方式
メリット
充電時:きめ細かく充電するためセルバランスが良好になる
使用時:出力系統に余計な素子が無いため放電能力が極めて高い
保管時:電圧計表示をしていない状態で無負荷のためほとんど放電しない
デメリット
充電時:若干接続が多くなる
使用時:過放電制御ができない
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以上のようにメリットとデメリットを比較するとバランス充電方式が優れています。
Tsuchiya Works
ではバランス充電方式を採用しています。
尚、24ボルトバッテリの充電器、FB-CargerVでは汎用充電器を使用して急速&バランス充電方式を採用しています。
Tsuchiya Works バッテリを末永くつかっていただくポイント
リチウムバッテリは取り扱いによって大きく寿命に影響します。
専用充電器で充電する、使用時には下限電圧を守る、この2点は必須です。
ここでは説明書と重複する内容もありますが、改めて説明書に記載していないことも含めてご説明いたします。
※充電時の取り扱い(危険)
充電時の事故拡大防止のため充電時にはその場を離れれないようにしてください。
充電器には安全対策として多重に保護回路が組み込まれていますが、故障、設定不良等によって稀に誤作動もありえます。
エネルギー密度の高いバッテリ故、大きな危険も潜んでいます。 充電中の異変になるべく早く対処できるように ”充電中その場を離れない” を励行してください。 お手数をお掛けしますが宜しくお願いいたします。
※保管時の取り扱い(注意)
かなり頻繁にお使いの方であっても現実には使っていない時間がほとんどです。
この一番長い時間にバッテリのコンディションを落とす恐れがあります。
バッテリは外部に負荷が繋がると化学反応により電荷を放出します。
また外部から電流を印加すると化学反応により電荷を蓄えます。
化学反応はフル充電時と下限電圧近辺で最大となります。 言い換えるとその両者は非常に不安定な状態になります。
”保管時は中間電圧にしてください”と説明書に記載している理由です。
中間電圧で保管することにより、言わば”冬眠状態”になります。
※保管場所について(注意)
保管場所は室内でも倉庫でも構いませんが、室温0〜30℃の範囲が適温です。
直射日光のあたる場所や暖房機の熱風があたる場所は厳禁です。確実に適温範囲から外れます。車中の保管も危険です。
むしろ低温のほうが化学反応が抑えられるため保管には適します。
バッテリそのものは”冬眠状態”ですが、自ら熱を発することはありません。
※長期保管について Tsuchiya
Works
バッテリは3ヶ月程度の保管で著しく電圧降下することはありません。自然放電が極めて少ない。(電圧を表示しない状態)
電圧降下しない=化学反応していない ”冬眠状態”が維持された証しです。
これはリチウムバッテリそのものの特性です。
バッテリユニットに充電機能等を付加した一般的なバッテリは電子回路により僅かに放電するため定期的に充電が必要です。
※フル充電して持参したが使わなかった場合
フル充電=不安定 ⇒ 長期保管 不安定×長時間
自然放電しないのがメリットのはずが、逆にデメリットになりかねません。
電圧計を表示したまま1〜2週間ほど放置します。 この場合、過放電防止のため目に付く場所に置いてください。
もちろん適当な電圧まで落ちたら電圧表示を消してください。
※使わない可能性が高い場合
悪天候が予想され、中止になる可能性が高い、でも・・・ そんなときは、充電を抑え気味にしてください。
4セルバッテリであれば、トータル16Vぐらいで充電を手動で止めます。
これでも90%程度充電されていますので、使ったとしても支障はないはずです。
※放電器のご案内
バッテリをより良いコンディションに保つためのオプションとして放電器(FB-Discharger)がございます。
※バッテリ性能低下の現象 充電できない
充電器が正常の場合は過放電、一部セルの劣化が疑われます。
電圧の表示が出ない、異常に低い=バッテリユニット交換が必要です 使用できる時間が短くなった
程度によりますが、寿命のためバッテリユニット交換が必要です バッテリに膨らみが出てきた
数ミリ程度の膨らみは正常の場合がありますが、内部の電解質(ゲル状)が一部気化した恐れがあります。過放電、保管状況不良等が原因としてあげられます。
充電可能なバッテリ(蓄電池)は種類を問わず概ね3年前後が寿命と言われています。
※バッテリユニットの保証について
バッテリ本体および充電器は一年間の保証がございますが、保証規定の範囲で無償修理になります。
バッテリユニットについては取り扱いによっては早期故障もありえます。 保証の対象にならない場合もあります。
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